商談の最初の10分でほぼ必ず出る質問が、欧州でのBtoB営業は合法なのか、というものです。短く答えると、企業が自ら公開している問い合わせフォームから連絡する形、いわゆるフォーム営業は、米国、英国、フランスを含む世界の大半の国で原則として認められています。一方で欧州には規制が厳しく、Knockwire が既定で除外している法域が2つあります。以下はその長い版と、既定値をそう決めた理由です。
私たちは弁護士ではなくエンジニアで、この地図は製品の初期設定を決めるために自分たちで描いたものです。規制のおおまかな形として読んでください。そのまま依拠できる助言ではありません。
01事前同意なしでBtoB営業が認められる国
多くの市場では、企業が自ら公開した経路に向けて書くことは、迷惑行為ではなく通常の商用連絡として扱われます。私たちの送信量のほとんどを占める3つの市場は、いずれもこの区分に入ります。
- 米国。商用メッセージに関する連邦法 CAN-SPAM はオプトイン方式ではなくオプトアウト方式で、電子メールを想定して作られています。企業が公開している問い合わせフォームへの送信は、この法律が想定した対象ではありません。州の個人情報保護法は、連絡する行為そのものより、データの取り扱い方に効いてきます。
- 英国。PECR のダイレクトマーケティング規制は電子メールに適用され、法人契約者は同意要件の対象外とされています。個人事業主と多くのパートナーシップは個人として扱われ、この適用除外から外れます。メッセージを読む人物に関する個人データの取り扱いには、引き続き英国GDPRが及びます。
- フランス。業務上の目的で業務上の連絡先に連絡する場合、事前同意は不要である、と監督機関が長年明言しています。ただし内容が相手の職務に関係していること、そして拒否する手段が分かりやすく用意されていることが条件です。
3か国に共通する形は同じです。判断の分かれ目は、受け手の性質とメッセージの関連性であって、その企業の存在を知ることに許可が要ったかどうかではありません。
02ドイツとイタリアを既定で除外している理由
この形に当てはまらない法域が2つあります。Knockwire が全面的な許可ではなく除外リストを同梱して出荷しているのは、この2つがあるからです。
ドイツでは、不正競争防止法(UWG)第7条により、承諾のない広告は事前の明示的な同意を要する不当な迷惑行為として扱われます。ドイツの裁判所は、企業が受け手である場合をここから切り出してはいません。企業自身の問い合わせフォームを通じた広告は、安全だと前提されるどころか実際に訴訟になっており、法域が出せる合図としてはこれ以上ないほど明確です。
イタリアも同様で、監督機関である Garante のもと、マーケティング目的の連絡は同意を出発点とします。フランスのような広い法人向け適用除外は用意されていません。
そのため Knockwire は、ドイツとイタリアを既定で除外しています。ドイツ企業を読み取った実行は、他のゲートとまったく同じ形で、法域名を添えて「ノックが許可されない」として見送りを記録します。それ以上のリサーチも、下書きの作成も、配信も行いません。
テナントはこの設定を変更できます。ただしそれは、助言を受けた担当者が文書によって行う、意図的なポリシー変更です。誰がいつ変更したかは監査ログに残ります。製品としてやらないのは、その月に通過した企業が少なかったからといって、既定値を黙って緩めることです。商業的な圧力で動くコンプライアンス設定は、コンプライアンス設定ではありません。
03正当な利益と利益衡量テスト
EUと英国では、処理そのものにGDPR上の適法な根拠が必要です。BtoB営業の場合、その根拠は通常、同意ではなく正当な利益になります。前文はダイレクトマーケティングが正当な利益になりうると明記していますが、これは出発点であって結論ではありません。
飛ばされがちなのが利益衡量テストです。形ははっきりしていて、次の4つの問いになります。
- その利益は実在し、具体的か。「売上を伸ばす」は具体的ではありません。「公開されているスクレイピング基盤のコストを、実測できる形で下げられるデータ企業に連絡する」は具体的です。
- その利益を達成するために、この処理は必要か。もっと侵害の少ない方法で、同じ結果が同じように得られないか。
- データの出どころと、相手がそれをどこに公開したかを踏まえて、受け手はこの連絡を合理的に予期できるか。
- 関係する個人への実際の影響はどの程度か。そして、拒否するための簡単で分かりやすい手段が用意されているか。
公開された法人向けの連絡経路であれば、このうち3つは素直に答えられます。データは、連絡を受けるという明示された目的のために、企業自身が公開したものです。予期できるかどうかも無理のない範囲です。個人への影響は、メッセージを受け取るために存在するキューに1通が届くこと、それだけです。
利益衡量の理由づけは形式として済ませず、テナントごとに文章で残しています。半年後に説明できない適法根拠は、根拠として大した意味を持たないからです。
04問い合わせフォーム営業は受信箱よりリスクが低い
フォームと、収集した個人の受信箱とのあいだには、リスクの実質的な差があります。形式論ではありません。
収集した受信箱は、本人の関与なしに取得した個人データであり、しかも本人が自分の領域とみなしている場所に届きます。利益衡量テストのどの要素も難しくなります。予期可能性は弱まり、侵害の度合いは上がり、アドレスの入手経路は監督機関に説明したくないものであることが多い。
公開された問い合わせフォームは、その多くを反転させます。経路を選び、公開し、人を配置したのは企業自身です。受け手は個人名ではなく役割であることがほとんどです。そして試行のすべてが監査できます。フォーム自体が記録になるからです。どの項目に何を入力し、ページがどう応答したかが残ります。
これはリスクの差であって、免許ではありません。メッセージは相手に関係している必要があり、差出人を明確に名乗る必要があり、拒否の手段を示す必要があります。Knockwire は実在する氏名と実在する所在地のもとでノックします。架空の人物も使い捨ての受信箱も、製品のどこにも存在しません。自分の名前を出せないメッセージは、そもそも送るべきではないからです。
05この地図で解決していないこと
この地図が意図的に開いたままにしていることが3つあります。
- 業種別の規制。規制業種には、一般的な扱いの上に重なる独自の連絡制限があり、それは商業登記の情報からは見えません。
- 個人事業主との境界。とくに英国では、1人で営む事業が個人の側に分類されることがあります。登記データだけでは、どちら側なのか判別できない場合が少なくありません。
- 地図を描いていない法域。EU、英国、米国以外は現在、緩い既定値ではなく、明示的な許可リストで扱っています。したがって私たちが何も書いていないことは、許可ではなく除外を意味します。
検討している方への実務的な結論はこうです。法的な論点は、営業行為そのものの是非というより、どの経路を選んだか、そして後から理由を示せるかにあります。公開されたフォーム、関連性のあるメッセージ、名乗った差出人、文章化した適法根拠、そして説明できる対象国リスト。この5つがそろっているほうが、購入リストについて巧妙な理屈を組み立てるより、はるかに有利な立場に立てます。
メール送信は、現時点でこのどれにも含まれていません。2026年第4四半期のロードマップにあり、出荷するまでは「未実装」と表示し続けます。実装したときには、この地図の電子メール版が別途必要になります。公開フォームに対して比較的緩やかな規制も、電子メールに対しては明らかに緩やかではないからです。